PAPAMAMA-TOMO
PAPAMAMA-TOMO

本プロジェクトは、日本の学校に内在する暗黙的な文化や制度によって生じる「見えない壁」に注目し、それらを可視化・共有することで、外国人保護者やその子どもだけでなく、教育現場全体を支援するAI基盤の構築を目指すものです。
研究の経緯 ― 背景と課題
日本語指導が必要な外国人児童生徒は年々増加しており、それに伴って、日本の学校文化におけるこれまで可視化されにくかった課題が明らかになりつつあります。
日本には他国と同様、独自の学校文化や制度が存在します。近年では、学校と保護者の連絡にアプリを活用する学校も増えていますが、依然として児童生徒が持ち帰る「学校プリント」が主要な情報伝達手段となっている学校も少なくありません。
この学校プリントは、日本の学校文化を象徴する存在であり、外国人保護者にとっては、日本の教育制度の中で保護者として関わるうえで越えなければならない「壁」の一つとなっています。
学校プリントには、緊急性の高いものから低いものまで多様な情報が含まれており、保護者はそれらを瞬時に判断することが求められます。しかし、日本語能力が高い外国人保護者であっても、学校内で当たり前のように使われている独自用語や表現によって、内容の理解や緊急性の判断が難しくなることがあります。
例えば「自然教室」という言葉は、「自然」「教室」という個々の語の意味は理解できても、一つの学校行事名としての意味は容易に推測できない場合があります。
また、保護者への情報提供や教科学習支援の場面では、「翻訳だけでは伝わらない」文化的背景や制度理解の壁が存在し、教員や支援者の負担も増大しています。学校プリントを作成する際に、外国人保護者向けに個別の文化的説明まで含めた資料を用意することは、時間的・労力的に大きな負担となります。教員の業務過多が課題となっている現状において、こうした追加的対応を現場に求め続けることは現実的ではありません。
このように、日本の学校に通う子どもとその外国人保護者は、言語・文化・制度の違いによって多様な「見えない壁」に直面しています。これらを放置すれば、保護者の不安や孤立を深めるだけでなく、子どもたちの学びや成長の機会を損ない、持続可能な多文化共生社会の基盤そのものに影響を与える恐れがあります。
研究の目標
本プロジェクトは、外国にルーツをもつ子どもとその保護者が、日本の学校や地域社会において安心して学び、暮らすことができる環境を整えることを目的としています。特に、日本の学校における暗黙的な文化や制度によって生じる「見えない壁」を可視化し、外国人保護者のみならず教育関係者も支援するAI基盤を構築します。
第一段階として、福岡市をモデル地域とし、保護者向けAIチャットボット「PAPAMAMA-TOMO」を開発します。あわせて、児童生徒向けには、教科横断的な語彙や学校文化に関する知識を支援する学習支援辞書(チャットボット形式にも対応)を整備します。
これらのツールは、地域の支援団体や教育現場と連携し、保護者や児童生徒との対話を通じて得られる暗黙知を蓄積・可視化しながら、参加型で改善される「知識共創型」の多言語支援環境として構築されます。
次の段階では、複数の現場における実証を通じて、全国展開に向けた研修教材の整備や実装準備を進めます。将来的には海外での応用も視野に入れ、持続可能で包括的な教育支援モデルの確立を目指します。
研究プロジェクトについて
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研究期間:2025年10月〜2027年9月
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研究助成名:JST RISTEX SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム
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研究課題名:「見えない壁」に挑む:多文化共生社会を支えるAIシナリオの策定
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グラント番号:JPMJRS25I1
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研究代表者:李 暁燕(九州大学 共創教育推進センター 准教授)
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協働実施者:ブイ・ティ・トゥ・サンゴ(一般社団法人 福岡国際市民協会 代表)
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主たる実施者:島田 敬士(九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授)


